ペットと暮らせる老人ホームが人気

神奈川県横須賀市にある社会福祉法人心の会の特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」では、犬または猫と共に入居することが可能なんです。

この先進的な取り組みが、特別養護老人ホームで可能になっていることが注目されています。

なぜこうした取り組みが実現できているのか。
その想いとは。「この取り組みが全国に広がってほしい」と語る施設長の若山三千彦さんのインタビューを見てみましょう。

■全国的に珍しい、ペットと入居可能な老人ホーム

施設でのペットの取り組みについて教えてもらえますか?

2012年4月の開設当初から、犬猫と共に入居可能な「伴侶動物福祉」を行っていて、入居者様がワンちゃん、ネコちゃんと一緒に暮らしています。たとえ飼い主さんが亡くなっても、私たちが一生面倒をみているんです。

予防接種などの管理もしていますし、犬の散歩はボランティアの協力によって毎日朝晩行っています。庭や屋上で走ることもできますよ。

「さくらの里 山科」

現在暮らしているのは、犬5匹、猫10匹です(2015年10月23日現在)。でも、犬猫専門の施設なのではなく、専用フロアを設けています。施設は4階建てで居室が全部で100室あり、そのうち2階の40室がペット対応フロアです。特に動物と暮らすことを望んでいない一般の人も入居しているため、他の階には犬猫を入れないようにしています。

構造は、国が推奨しているユニット型で、10室の個室が一つの区画になって独立しています。1区画ごとに玄関があって、真ん中にリビング、トイレ、浴室、キッチンがあります。つまり、1ユニットが10LDKのマンションのようになっているんです。

2つずつ犬猫のユニットを設け、それぞれ犬好き、猫好きの人が入居しています。ユニット内では、犬猫たちは完全に自由にしている。入居者様の部屋やベッドに入ることもあります。

unitBユニットは猫、Aユニットは犬と一緒に暮らしている。

――全国的にも珍しい取り組みではないでしょうか。

はい。看板犬のような形で動物を飼っている施設はあっても、一緒に暮らせるところは有料老人ホームも含めてもほとんど見つかっていません。特養で取り組んでいるのは、全国唯一かもしれません。

■生活の質を上げたい。目指すは「あきらめない福祉」

――なぜそうした取り組みが可能になっているのですか。

私たちの法人の根本的な考えは、「あきらめない福祉」です。日本の現状では、施設に入るとあきらめなければならないものがたくさん出てくるんですよ。例えば、旅行や外出、好きなものを食べること、趣味の活動。朝ゆっくり寝ることや夜更かし。そして、ペットを飼うこともあきらめないといけないんです。

それらを変えていきたいという想いがあります。高齢になっても普通の人と同じように人生を楽しんでいただきたい。福祉は本来、生活を支える場なので、生きるのに最低限必要なケアだけではいけないはずなんです。

そこで、旅行や外出行事を頻繁に企画し、食事にも力を入れてきました。そうした流れのなかで、「じゃぁペットも入れるようにしよう」となったんです。ペットだけが特別なのではなく「生活の質をいかにして上げていくか」を大切にしてきました。

――そうするのが自然だったのですね。

そうなんです。ペットについても、色々やっていることの一つにすぎませんので。特にアピールしているわけではないんです。

■切実な状況に置かれている人は多い

——オープンから3年以上経って、「伴侶動物福祉」をどう感じていますか。

実は、一緒に入居された例はまだ少ないんですよ。犬が一組、猫が三組(4匹)です。

しかし、4件とも状況はとても切実でした。一人暮らしで認知症が進み、料理などの家事が一切できなくなってしまい、餓死または凍死をする可能性があって、市の担当者が特養への入居をすすめても、犬を置いてどこにも行けないと拒んでいたケースや、子供などの家族がいない方が、自分が先に亡くなった場合に、大切なペットがどうなるのかが心配で体調を崩して入院していたケースなどです。

——入居者様にお話を聞いたら「懐いてくれていて、寝る前に毎日来てくれる。幸せです」「自分が先に死んでしまったらどうしようと思い悩んでいた。在宅に執着しないほうがいい。あきらめないでよかった」と言っていました。

入居者様にとって、動物たちの存在は癒しになっています。認知症の症状の改善や進行の防止、身体能力の向上、健康増進にもつながっています。非常に大きな効果がありました。これは予想以上でしたね。

ただし、一緒に暮らすことが目的であって、いわゆるアニマルセラピーが目的ではありません。「施設のアニマルセラピーを見学させてください」と外部の方からご連絡をいただくことがありますが、私たちはセラピーをしているとは考えていないんです。

——独居でペットを飼っている方が亡くなった場合、一般的に、残されたペットはどうなるのでしょう?

あるボランティア団体から聞いた話だと、かなり高い確率で、保健所で殺処分になっているようです。飼い主が亡くなったり入院したりすると、保健所の分類上は「高齢者の飼育放棄」と見なされてしまいます。また、横須賀では独居の高齢者が亡くなってから3カ月後に、餓死した犬が見つかったというニュースがありました。

日本のペット問題の根本解決の一つは、高齢者とペットの問題を何とかすることだという話もあります。ペットを飼っている高齢者がとても多いものですから。

でも、現在は80~90代で飼っている人は決して多くない。重要なのはこれからだと思いますよ。今後、団塊の世代、つまり70代で飼っている人がペットと共に年老いて80代に突入していきますから、飛躍的に増えるでしょう。

一人暮らしでペットを飼っていたけれど、自分が倒れてしまい、泣く泣く保健所に連れて行かれてしまって、もう生きる気力をなくして半年もたたないうちにご本人も亡くなってしまった……という例も見ています。

参考:HUFFPOST

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